「見える!地域自治の現状と可能性」開催レポート

TAMBA地域づくり大学1回目の講師は
IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所]の川北秀人さん

今年のTAMBA地域づくり大学は、その道の第一人者からお話を聞く「地域づくり基礎講座」、力をつける「地域づくり実践講座」、実際にアクションを起す際の「プロジェクトマネジメント講座」という構成で企画しています。
地域づくり基礎講座では、自治、IT活用、教育、働き方の分野で、受講者がそれぞれ何かしらの気づきを得る講座にしたいと考えています。
じつは自治組織についてお話をしていただくのに誰を呼ぶのがよいか、色々な人に相談したのでした。
そしたら、聞く人聞く人、口を揃えて川北さんの名前が出てくるので、今回思い切ってお呼びすることになったわけですが
いやー、もう本当に、呼んでよかった!たくさんの学びをいただきました。

まず出会った瞬間から、本気度が伝わってくる問いかけや表情、ご自身の経験から相手にとってベストな方法を惜しみなく伝授してくれる姿。
何より私たち運営側がやらねばという気持ちになりました。

どのような講座だったのか
その場に来てもらえないと全部の熱量は伝えられないのですが、
少しでも多くの人に今回お聞きしたことを届けられたらと思います。

丹波市の現状

日本の経済は94年を境に右肩下がりになっており、今は昭和45年と同じくらいのGDPになっているとのこと。

長年、高齢化が叫ばれてきましたが、今まで増えていたのは60代以上の高齢者。
65歳〜69歳の年代の要介護3-の割合は1%、つまり100人にひとり。
まだまだ動けるし、畑をしたり、地域の役もできる、元気高齢者です。

しかし、これからは80代以上の高齢者が増えてくる時代。
85歳以上では要介護3-の割合はなんと23.9%、4人に1人が自分で歩くことが困難な介護者です。

介護にかかる費用は、1日あたり1万円でみたとしても
1人あたり年間365万円、保険料の適用から考えると市の財源から50万近くかかることになります。

驚くことに、丹波市の高齢化率は全国平均より20年先に進んでいるそう。
実際に今現在も10軒に1軒は75歳以上で構成されている家族です。
集落によってはもっともっと進んでいることが実感されるでしょう。
このまま介護が必要な高齢者が増えていくのを本人の責任だけにしておいていいのでしょうか。
地域で高齢者の健康を維持し、これからも元気に農作業をしたり地域に出て来てもらわなくてはなりません。

また、丹波市の公共施設の管理面積は1人あたり5.8㎡、全国平均が3.2㎡なのでおよそ1.6倍です。
人の高齢化とともに、建物も老朽化してくるので、私たちはその維持更新費を税金から支払っていくことになります。

納税をしている私たちは、いわばこの地域の株主。
市の財政を日頃から意識し、効率よく投資していかなければ、財政破たんしてしまいます。
なんでも行政にあれしろこれしろと言っていてもいいのでしょうか。
丹波市の財務状況から、2005年から2015年にかけて丹波市職員の給与は25%も削減、人員も701人から558人へと削減されていることがわかります。人口の減り具合から見ても同じ仕事の量を少なくなった職員数で回していることになります。
行政職員に少しでも効率よく仕事をしてもらうのも我々の使命です。

丹波市の各地区の人口構成分布表をつくってみると、若い人が多く高齢者が少ない地域、若い人が少なく高齢化が進んでいる地域など
同じ町の中でも様々です。他の遠い地域の事例を学ぶより、丹波市内の10年先を行ってる地域の取り組みから学んだ方が、自分たちでもできそうな気がしますね。

このような人口データは国勢調査の結果から誰でも見ることができます。また財務書類もすべて公開されています。私たちもいつでも見られる情報なので、日頃から意識すること、またその意識を広げていけたらと思います。

持続可能な地域であるために

川北さんから、自治の意識が進んでいる事例をいくつもご紹介いただきました。

長崎の3年に1回の頻度で浸水が起こる地域では、誰が誰を支えるのか、平日の昼間(地域に人がいない時間帯)と休日の朝(地域に人がいる時間帯)に分けて見える化した防災マップを作っているそうです。

札幌のある坂道の多い地域では、草刈りよりも冬のアイスバーンでのゴミ捨てに困っている高齢者が多く、中学生が登校時に寄り道ボランティアでゴミ捨てをしているそうです。

北海道浦幌町の未来をつくる子どもたちの事例や、地域自主組織が作られている雲南市の事例など
住民が自分たちの地域がどのような特性があるかしっかりと認識し、自分たちでより良い方法を考えて実際に取り組んでいる話、ここでは書ききれないのですが、詳細は川北さんの著書ソシオ・マネジメントに掲載されてます。
どんな話かご興味ある方は、聞いた内容ですがお話しますので、ぜひgiftまでご連絡ください!

持続可能な地域であるために、重要なことは経済と福祉。
イベントや行事ばかりではなく、住民ひとりひとりの意識調査を行い、
地域の特性や人口の明確な推移データから、しっかりと暮らしを支える活動にする必要があります。

人口が減り、85歳以上が増えていくとしたら、これまでと同じ時間の使い方をしている場合ではありません。
行事や会議の棚卸しを行い、横串でそれぞれの組織のスケジュール共有をしていかないと、地域は疲弊していくばかりです。

時間とともに地域が変化していくことに、私たちは進化して対応していきたいと思います。

最後に川北さんから、
「この話を聞いた皆さんは運命共同体です。」と。
それぞれが「頑張りましょう!」と熱い握手を交わしました。

川北さんは、地域組織の未来の組織図を書いたり、自慢大会、取組共有大会など、色々なワークショップ形式も行なっているそうですので
次回は一歩進化した形で川北さんをお呼びできるように、私たちも取り組んでいきたいと思います。

川北さんからたくさんの道具をいただいたので、それをしっかり使っていきたいとgiftの出町さん。